PROFESSIONALS 2021.05.27

Farm To Bar | Bar Ben Fiddich 鹿山博康

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バックバーの向こう側

世界のトップバーを表彰するThe World’s 50 Best BarsAsia’s 50 Best Barsでランクインする以前から、バー・ベンフィディックはカクテルファンにとって静かなる聖地のような存在だった。

ミステリアスな雰囲気が漂うビンテージボトルの並ぶバックバーや、オーナーバーテンダー鹿山博康さんのお茶目なホスピタリティなど人気の秘密は数多くある中、このバーの最大の特徴は「Farm To Bar」というアプローチにある。

ファミリー・ルーツ

秩父市の隣にあたる埼玉県比企郡で生まれ育った鹿山さんの実家は農業を営んでいる。昔は家畜も飼育していたため、幼い頃は土、牛、そして山の景色に囲まれて育ったという。近くの山も土地の一部は家族に代々受け継がれていたため幼い頃から自然に触れ合う機会は身近にあったようだ。

少年時代の殆どを野球に費やしたという鹿山さんの最初の職場は地域のレストランバーだった。そんな中で節目となったのはアブサンやシャルトリューズなどヨーロッパの薬草リキュールの発見だった。薬草酒に心を奪われた鹿山さんは20代の頃から早くもアブサンはじめ様々なビンテージリキュールのコレクションをスタートする。

そうしたビンテージリキュールの原材料として使われるハーブやスパイスなどの多くは日本で一般的に市販されておらず、業者も取り扱っていないことが多い。これらのレアボタニカルのフレーバーにアクセスするには鹿山さんが自ら育てるしかないと思い立った。

フレーバーを育てる

そうしてたどり着いたのが「鹿山畑」と自称している実家の畑だった。アブサンなどの原料であるフェンネルやニガヨモギをはじめ様々なヨーロッパのハーブや日本の固有種を育てている。最近では200ほどのジュニパーの苗木を植え、日本一のジュニパーファーマーも目指しているという。バー・ベンフィディックのカクテルで使われるハーブの殆どはここで鹿山さんが自ら育てているものだ。

動画「Farm To Bar」では、開店以来初めてバー・ベンフィディックを訪れた父親に、鹿山さんが自ら育てたニガヨモギとThe SG Shochu MUGI を使った「ニガヨモギ・ギムレット」を作るシーンがある。そのかけがえのない液体を味わう父親の表情に、鹿山さんのカクテルに宿る味わい深さの秘密を垣間見ることができる。

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